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ココヤシ文化語彙

ココヤシは、パンノキやバナナのように入植者によってもたらされたものではなく、ヨーロッパ人の到来以前からツバル人によって栽培されてきました(Koch 1961)。その用途は、建材、衣類、飲食物、器、籠、玩具、漁業用具、縄紐、香料、燃料、飼料、肥料、薬、たいまつとじつに多岐にわたります。KochのThe Material Culture of Tuvalu(1961)には、衣食住をはじめさまざまな分野における道具や産物がまとめられていますが、ほとんどすべてのカテゴリーにココヤシの利用がみられます。

ココヤシがいかにツバル人の生活に欠かせないものであり続けてきたかということは、彼らの言語にも反映されています。人々が生活環境のなかでココヤシをどのように範疇化し、利用してきたのか、ここでは主にココヤシの樹木と葉の部位別・状態別の分類からみていきます(果実であるココナツの分類法については、「ココナツの民俗分類」のコラムをご覧ください)。くわえて、「ココヤシに登る」、「ココナツの皮を剥ぐ」などココヤシにしか用いられない動詞や、「ココナツ1つ」、「ココナツ2つ」というココナツにかぎられた数え方も紹介します。

ココヤシの葉の部位別・状態別名称

ココヤシの葉の部位別・状態別名称
launiu1 kaulama pālafa
小葉が付いている(+)か否(-)か
緑色(+)か、茶色(-)か ±
幹についている(+)か否(-)か ±
kautuāniuとkaka

ココヤシの葉の形態と部位名称(杉村・松井1998参照)

ココヤシの葉の形態と部位名称

ココヤシの葉と樹木の部位別用途(Koch 1961を参考に橘加筆・作成)

部位 用途
A taume(花序を包む仏炎苞) 先端を切ってヤシ汁を採取する。たいまつやトングに用いる。
B lōlō / kaulōlō(果実を支える花軸) 茶色く乾燥したものを燃料として用いる。
C kaumoe(若く開いていない複葉) うちわや籠を編む。舞踊用のスカートに用いる。
D launiu2(小葉) ござ、皿、籠、うちわを編む。屋根材、ゲーム用ボール、舞踊用スカート、玩具の風車、調理する魚を包むラップなどに用いる。
E kaulama(古く茶色い複葉) 塀、防風フェンスに用いる。ブラインド、皿、ゴミ箱、籠などを編む。屋根材、漁業用たいまつ、花輪、舞踊用スカート、たい肥、薪などに用いる。
F kalava(軸の表面の硬い部分) 適当な太さ・長さに裂いて様々なものを束ねるために用いる。
G pālafa(軸) 物を運ぶ際のかつぎ棒、料理の際のかき混ぜ棒、屋根材、家の壁、部屋の間仕切り、井戸のふた、細く裂いて魚を運ぶためのベルト、燃料、薪、クリケットのバットなどに用いる。
H kautuāniu(小葉の中肋) ほうき、籠、ハエ除け、玩具の風車やカヌーなどをつくる。爪楊枝、魚料理の串、漁のための矢、カニの神経締めなどに用いる。屋根ふき材の留め具として用いる。
I sikusiku(複葉の先端部分) 先端を結んでハエ除け、茂みに入った際の蚊除けなどに用いる。乾燥したものは燃料として用いることもある。
J kaka(葉柄の付け根のガーゼ状の繊維) ココナツミルク、オイル、ヤシ汁、ハーブ(薬草)などをろ過するためのフィルター、生薬、燃料などに用いる。
K pokofa(葉柄の付け根付近の太い部分)
L pakili(樹皮) 身体用オイルの香りづけ、舞踊用スカートをいぶすのに用いる。燃料として用いる。
M aka(根) 生薬、漁具(魚の罠)
N fataliga(葉柄と葉身の境目付近) この部位自体には何の用途もない。ここにkakaが生えている個体はヤシ汁を取るのに適したココヤシといわれる。(ナヌメア島)

ココヤシの葉と樹木の用途分析

ココヤシに関連した動詞

一般 ココヤシ
切る kati (英語からの借用語)
tipi(サモア語からの借用語)
sali/hali ココナツの果肉を切る
take/tītake (果汁を飲むために)ココナツの殻の上部をナイフで切る
※fakapī:(果汁を飲むために)ココナツの殻の上部を丸くくりぬく
tāteke/
fakalekaleka
ココヤシに登るための足掛かりを作るために幹にナイフや斧で切れ目を入れる
tātekeは「ココヤシに切りつけた足掛かり」(名)の意味もある。
faka(行動を起こす)+leka(ココヤシに切りつけた足掛かり)
登る kake tike ココヤシの木に登る(足にロープをかけて、あるいはかけないで、しゃがむような姿勢から両足を同時に動かして飛び跳ねるようにして登るスタイル)
kakefakatamana ココヤシの木に登る(ロープなしで手足を交互に動かして登る昔ながらの「親父登り」スタイル)
kake(登る)+ faka(~のように)+ tamana(父親)
包む kofu kāpui/afii(N) (焼くために)ココナッツの葉で魚を包む
皮を
剥く
fole oka ココナツの皮を剥く
keti ココナツの皮を歯で剥く
削る soi, soisoi, valuvalu valu ココナツの果肉を削る

ココナツの数え方

ココナツの数え方 ココナツの数え方
1 tasi tasi 6 ono onogafua
2 lua teaoa 7 fitu fitugafua
3 tolu tolugafua 8 valu valugafua
4 fā fagafua 9 iva ivagafua
5 lima limagafua 10 sefulu fui / fuipī
CC-BY-NC
ツバル言語文化辞典
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